『初プロツアー と 人』 インタビュー:佐藤 光(コミかる堂高崎店)
 誰もが、ではない。選ばれた者のみが集う舞台『プロツアー』。

 その空気は参加者しか知らず、その緊張感はプレイする者のみが味わえる。

 言葉にできない気持ちと言ってしまえばそれまでだろう。

 それでも、参加者は抽象的であってもその経験を素直に伝えるべきではないだろうか。

 彼らの言葉は、周囲のプレイヤー達へと伝播し、次の世代へと受け継がれていく。

 Magic: The Gatheringは単なるカードゲームという枠を超え、店と人を、人と人を、人とコミュニティーを結びつける生き物のような摩訶不思議な媒体である。

 だからこそ参加者の気持ちは、プロツアーに参加したの証として、多くの人と共有されるべきではないか。

 これは、群馬県からプロツアーへの参加を果たした、若き侍たちを取り上げ、勝手にインタビューしていく企画である。

 第1回目となる今回は、『プロツアーイクサラン(公式カバレージページ:http://coverage.mtg-jp.com/ptxln17/)』に参加した佐藤 光(コミかる堂高崎店)である。


::ぶっちゃけ、佐藤って誰やねん?
―いきなりですが、佐藤さんのことを教えてください!

 「自分は中学時代、旧ミラディンからマジックを始めました。友人達と一緒に遊戯王、デュエル・マスターズを経て、自然とマジックへ行き着きました。高校時代は遠ざかりましたが、大学時代に仲間内でマジックを始めようという気運が高まりして復帰を果たしました。

 「復帰後は仲間内でのドラフトが主な遊び方で、構築戦は各種サイトで大会結果やカードリストを眺めるだけ。大会と言えば近所のFNM程度でして、手持ちのカードだけで組み参加するカジュアルな付き合い方でしたね。

―大会参加はFNM程度ということですが、佐藤さんは何故プロツアーに出てみようと思ったんですか?

 「就職を機に群馬県に引越しまして。近くのカードショップを探したところ、コミかる堂高崎店を見つけ通い始めました。

 「その頃PTQからPPTQ制度に移行したタイミングで、自分もFNMからのステップアップという軽い気持ちで参加してみることにしました。ただコミかる堂の人達のPPTQに対する意識が高くて(笑)一緒のコミュニティーでマジックをプレイし、同じように大会に出ていたので無意識的に引っ張りあげられたのかも知れません。

―同じコミュニティーで一つの目標に向かって突き進むことでモチベーションの維持にも繋がったんですね。

 「何度目かの挑戦でPPTQを抜けることができました。初RPTQでは真剣にプレイしながらも、対戦相手の方々と話す内にテンションが上がり、大会が終わる頃にはまたこの場に来たいと思うようになりました。プロツアーは目標としては大き過ぎて具体的に思い描けないので、先ずはもう一度RPTQに参加し、前回よりも好成績で終えられるようにしようと決意しました。その後は練習が上手く成果を生み、RPTQに連続して参加することができ、3回目にして今回のプロツアーへの参加を勝ち取ることができました。

::初プロツアーを前に
―さて、RPTQを突破しプロツアーとなりますが、具体的にどんな練習を実施されたんですか?

 「ドラフトはMOを中心に、人が集まればコミかるでも。カードプールを見て自分で戦略、点数を考え、実践の繰り返しでした。時間が合えば地元の友人と画面を共有しながら意見を出し合ったりもしましたね。特に赤白恐竜、白黒吸血鬼は完成形をイメージし易やすく、ピックが終わった段階で失敗か成功か判断しやすい。他のアーキタイプに自信がない分、白絡みのピックは納得いく練習ができました。

 「構築は、コミかるを中心にMOの画面共有しながら地元の友人ともやりました。メタゲームをティムール・エネルギー、赤単、スルタイ・エネルギーの3本に絞り、それらに強いデッキを模索するうちに、赤以外の4色トークンデッキが完成しました。実際メインだけなら圧勝で、これならいけると確信もありました。

―おお、これは頼もしい発言。

 「が、ダメ!

―ダメなんかーい!

 「サイド後の対策カードが厳しくて。エネルギー系からはパーマネント対策とカウンター、赤単からは《暴れ回るフェロキドン/Rampaging Ferocidon(XLN)》と戦略自体に対するアンチテーゼと少しずつメタられ始めて勝てなくなりました。サイドを煮詰め切れなかったのが敗因ですね。《冠毛の陽馬/Crested Sunmare(HOU)》を試せていれば違った結果になったかもしれません。

 「そんなわけでデッキがなくなり、3日前になって急遽選択肢を変更したので、時間がなく、ティムール・エネルギーか赤単の2択になり、ミラーマッチを勝ちきるには練習が足りないと感じ、経験のある赤単を選択しました。

 「僕自身、ドラフトがかなり好きで時間さえ許せば無限にしていたい位なんです。そんな性格なのでリミテッドにおけるコンバットと、常に高くアンテナを張り情報収集に努めているのでメタ読みは自信がありました。ただ、構築にかける時間が少し足りませんでしたね。

::初プロツアーに参加して
―目標としていたプロツアーの地、どうでしたか?

 「うーん、プロツアーは、自分が思っていた以上に、遠い場所でしたね。参加して改めて分かりました。右を見ても左を見ても、動画や記事で見かけたトッププロがいるわけですから。対戦してみても、これほど差があるのかと痛感しました。

 「プロツアーの会場入り後、日本人プレイヤー同士でドラフトする機会があったんですよね。当然と言えば当然なんですが、理由なきプレイは咎められました。手なりに意味はない、改めて勝つということを意識させられ、自分がプロツアーに来たんだという実感も生まれました。

―普段画面越しに見ている人が目の前にいる、、、緊張しますね。それでも佐藤さん自身も準備はしたわけですよね?

 「自分は情報戦は自信があり、PPTQでは1週間前でも間に合うことがありました。プロツアーを甘く考えていたわけではありませんが、時間が足りませんでしたね。勝つためには情報もですが、それ以上にプレイングが必要でした。プロと渡り合うには、それに近いレベルで練習しなければならないと思いましたね。MOのリーグ程度では役に立たず、練習とはいえません。

 「対戦自体は、土地事故やマリガン、予想外のカード(タッチ赤からまさかの《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance(KLD)》)に負けることもありましたが、明確なミスが2点ありました。

 「先ず、マッチアップにおけるキープ基準を定めていなかったこと。ゲーム展開を考え、手札をキープできませんでした。スルタイ相手には除去なしの手札をキープした結果、《巻きつき蛇/Winding Constrictor(AER)》+《歩行バリスタ/Walking Ballista(AER)》を決められました。構築でもメインの《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ/Kari Zev, Skyship Raider(AER)》の3枚目、サイドボードに《削剥/Abrade(HOU)》の4枚目は必須でした。環境がテンポ寄りということもあり、複数引き腐るリスクよりも、引けた時のリターンが大きすぎました。

 「正直デッキの選択に後悔はありません。ただし、プレイに関してはもっと練らなければいけませんでしたね。メタゲームがはっきりしないからと理由をつけ、構築を後回しにしましたが、最低でもティムール・エネルギーと赤単は練習し、特性や嫌がるプレイを把握すべきでした。1週間では短すぎました。もっとやれることがあったはず。

―とてもシビアな感想ですね。プロツアーは大変そう、、、

 「簡単に勝たせてくれないという意味では大変な場かもしれません。でも、だからこそ楽しかったというのもあります。互いが自分の全てを出した上で勝負が決まる。それって素晴らしいことだと思いませんか?

 「プレイヤーについては思っていたよりもフランクでした。共通言語はMagic: The Gatheringなので、英語は弱くてもコミュニケーションはとれましたね。ただ残念なのがコミュニケーションは取れても、深い会話までできなかったことですね。Round1の対戦相手がAndrew Cuneo(アメリカ)でうまく話せなくて凄く悔しかったので。今後再び海外に行く機会があれば英語を学び、少しは話せるようになりたいですね。

::プロツアーと佐藤
―佐藤さんの中で、一つの大きな目標が達成されたわけですが、マジックにおける今後の目標はありますか?

 「マジックの目標は達成されたので、カジュアルな付き合い方に戻ろうかなとも思っています。プロツアー楽しかったけど、参加するには対価が必要ですし、ある程度成績を残すとすれば、今とは比べ物にならない位努力しなければかもしれません。マジックだけに時間はかけられませんので、少し控えようかなと。

―折角プロツアーに参加したのに、これで終わってしまうのは残念な気もしますが。

 「マジック自体は辞めませんし、参加できる限りはPPTQには出続けますよ。ただこれまでのような時間はかけられないので、気持ちとは裏腹に勝ちきれなくなっていくかなと思っています。プロツアーでも実感しましたが、練習しないことにはマジックは勝てませんので。

 「本音で言えばグランプリを転戦しつつプロポイントを稼ぎ、プロレベルを目指し、マジックを続けたい気持ちはあります。でもそれには海外グランプリに参加する必要もあるでしょうし、今の自分には現実的ではありません。将来的に時間にゆとりができたら海外グランプリに参加したい気持ちはありますので、そこまで細く長くマジックを続けられるコミュニティを作りたいと思います。

 「それに僕が第一線を引いたとしても、コミかる堂には素晴らしいプレイヤーが沢山いますので、安心しています。例えば僕自身は真下さんにプレイングで勝っているとは思いません。難波君はプロツアー目指し、精力的に活動しています。

―なるほど。佐藤さんの気持ち自体はコミュニティーとともにあるということですね。また、それだけ期待できるプレイヤーが多くいるということも嬉しいことですね。最後にコミかる堂で今後プロツアーを目指す方へ、一言お願いします。

 「もっとPPTQに出ろ!

 「PPTQを勝ち抜くには、プレイヤーの技術や環境理解、本人が得意とするフォーマット等色々あるけれど、先ずは参加しないことには権利を掴み取れない。そして参加し続けるということは、本人のモチベーションの問題でもある。他人に強制されて続けている内は、勝つことはできても、勝ちきることはできない。本人の意志で精力的に出続けることが、プロツアーへの第一歩です!

―ありがとうございました。

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