Round3 望月 広太(埼玉) vs カミヤマ マサル(群馬)


 昨年の話しになるが、2014年のモダンシーズンに主要デックと呼ばれ、多くのプレイヤーが警戒していたのは、親和、双子系、緑黒系の3つのデックであった。
 中でも緑黒系のデックは、《思考囲い/Thoughtseize(LRW)》に始まる手札破壊、《タルモゴイフ/Tarmogoyf(FUT)》や《闇の腹心/Dark Confidant(RAV)》等の強力な2マナクリーチャー、そして環境最強のプレインズウォーカー《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》を要し、コンボにもクリーチャーにも強い、隙のないデックであった。
 メタゲームが進む中で、次第にミラーマッチが増えていくと、白を足し《未練ある魂/Lingering Souls》を投入するといった器用さも見せた。

 だが1年が経ち、ここには緑黒系と呼ばれるデックはもはや存在しない。

 僅か1年で、というよりはタルキール覇王譚に収録された1枚のカードが、緑黒系と呼ばれていたデックを、新たなデックへと作り変えている。

 その名は《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》

 スタンダードに留まらず、モダン環境へも侵食し、主要メタデックとして活躍している。


◆望月 広太
 望月は、埼玉県大宮市の“大宮オーガ”、群馬県太田市の“コミかる堂太田”といったJR高崎線沿線に所在するショップへ精力的に通う“チーム高崎線”において活動している。

 デックの選択理由ですか?《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》が強いに限りますね

 力強く答えたそのデックは、《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》だけで成り立っている訳ではない。
 後手番からも対応できるように、またミラーマッチにおいて攻め手に回れるように《貴族の教主/Noble Hierarch(CON)》が採用されている。


◆カミヤマ マサル
 本年6月13日にBooksながしまで行われたPPTQ、その際にカミヤマはアブザンジャンク使いながら、こう語っている(http://68648.diarynote.jp/201508061110418205/)。

 本当なら、ジャンド、使いたかったんですよね

と。

 前回は決勝ラウンド進出とはならなかったが、今日はその手中にジャンドがある。渇望していたそのデックが。
 比較的親和が目立つ本日の大会では、安定したマナベースを持ち、《コラガンの命令/Kolaghan’s Command(DTK)》、《古えの遺恨/Ancient Grudge》といったメタカードを搭載したジャンドは勝者とも思える。
 そしてアブザンに対しても、効果抜群の《終止/Terminate》がある。
 ハンデス、除去、骨太なクリーチャー達は、何もアブザンだけの特権ではない。ジャンドにも《高原の狩りの達人/Huntmaster of the Fells》が存在している。


 アブザンを選んだ男と、アブザンを捨てた男。

 どちらの選択が正しいとか、どちらのデックが優れているか、その答えは聞く必要はない。

 マッチの終われば、証明されているから。

 そう言わんばかりに、黙々とデックをシャッフルする。


Game1

 キックオフよろしく、カミヤマが《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek》をキャストすると、

 《漁る軟泥/Scavenging Ooze(M14)》、《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang(FRF)》

といった2種類のタフなクリーチャーが望月の手札に残ってしまう。《寺院の庭/Temple Garden》を持ち合わせていたことでアブザンジャンクと判明すると、脳裏によぎるのは《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》だ。

 望月は、《漁る軟泥/Scavenging Ooze(M14)》が鏡打っている状況で、先手の利を生かし、《急速な衰微/Rapid Decay》で除去し、すぐに能力を起動し、3点のダメージを与える。
 後手に回ると挽回するのは難しい、押しの強さが売りのアブザンジャンクに対し、カミヤマは《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》で再び場に平穏をもたらす。

 望月は《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang(FRF)》で、カミヤマは《怒り狂う山峡/Raging Ravine》でダメージレースを仕掛ける。
 いや、カミヤマの手札には有効牌はなく、ダメージレースを仕掛けざるを得ない。

 このゲームを自分側に引き寄せたのは望月がトップデックした《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》。
 ライフを望月20に対しカミヤマ7とトリプルスコア近くまで離すと、《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang(FRF)》と合わせ8点分のクロックを用意する。

 カミヤマが《怒り狂う山峡/Raging Ravine》をブロックに回したことで、望月は《喉首狙い/Go for the Throat》をキャストし、ライフを削りきった。

望月 1-0 カミヤマ


Game2

 モダン環境における2マナ域ということを考えた際、何を思い浮かべるだろうか。

 クリーチャーであるならば《タルモゴイフ/Tarmogoyf(FUT)》や《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》、呪文であれば《差し戻し/Remand(RAV)》や《急速な衰微/Rapid Decay》と攻守共に様々なカードの応酬が行われる。

 この最重要とも言えるターンに、過去に環境最強と謳われながらモダン環境ではまだ、花を咲かせぬカードがあった。

 カミヤマは、2ターン目にエンチャントする。

 《苦花/Bitterblossom(MOR)》という大輪を。

 望月の土地が2枚で止まってしまったことも含めて、《苦花/Bitterblossom(MOR)》は圧倒的な航空戦力を生み出す。

 嘗てのスタンダード環境では、美し過ぎる花は朽ちゆくもの、と苦花死という逆転劇もありえたが、カミヤマは、美しさを失わない。
 墓地に落ちたクリーチャーをコストに《漁る軟泥/Scavenging Ooze(M14)》を育て、得たライフを《苦花/Bitterblossom(MOR)》を維持し続ける、貪欲なエンジンが搭載されている。

 望月は、《流刑への道/Path to Exile》等の単発除去こそ引くも、増え続けるフェアリーに対処することは不可能なのだった。

望月 1-1 カミヤマ


Game3

 望月は、Game2のお返しとばかりに表裏と《未練ある魂/Lingering Souls》をキャストし、航空戦力を確保する。

 カミヤマの手に《苦花/Bitterblossom(MOR)》はなく、《タルモゴイフ/Tarmogoyf(FUT)》、《闇の腹心/Dark Confidant(RAV)》と地上にクリーチャーを配置し、すれ違いのダメージレースが展開される。

 望月は、打点よりもカードアドバンテージに重きを置き、《闇の腹心/Dark Confidant(RAV)》を除去、攻守を入れ替えるかと思われた《高原の狩りの達人/Huntmaster of the Fells》に対しても、《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》とイニシアチブを譲らない。

 こうなってしまうとカミヤマに残されたのは、デックにたった1枚の《死の支配の呪い/Curse of Death’s Hold》を引くしかない。
 少しでも時間を稼ぐため、《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》をキャストするも、望月は愚直にライフを攻める。

 1枚、また1枚とライブラリーを捲るも、そこに望むカードはない。

 望月がトークンをレッドゾーンへ向かわせると、カミヤマは右手を差し出した。

望月 2-1 カミヤマ


望月 Win!

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