決勝 棚橋 雅康 vs 林 隆智
棚橋 雅康が、このテーブルに座った時、前回のPPTQを思い出さざるを得なかった。アブザンミラーを制した棚橋が、今度はモダンでも勝利する。
群馬は、棚橋牧場と化してしまうのか、そんな冗談めいたことを思ってしまった。
今大会を見た時、棚橋という存在は、デックも含めて抜きに出ている。
棚橋のデックは、赤緑のブリーチトラップに秘匿ランドを追加した、ナヤカラーのブリーチトラップ。
初見では、どんな動きは分かりにくい。仮に動きを理解していたとしても、《裂け目の突破/Through the Breach》と《召喚の罠/Summoning Trap》、小粒なクリーチャー達と《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》に導かれる秘匿土地が織り成すシナジーを適正に対処するのは困難だ。
ミラーマッチとなった準決勝、棚橋は緑マナのみの盤面へ《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》を投下し、赤マナを生成すると先手後手を入れ替え《裂け目の突破/Through the Breach》から《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn(ROE)》を決め、逆転勝ちしている。
勢いは十分、このままPPTQ突破となるか。
Game1
林の《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》でゲームの幕があける。
棚橋の手札は、
《巣の侵略者/Nest Invader》、《復活の声/Voice of Resurgence》、《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》、《裂け目の突破/Through the Breach》、《変わり谷/Mutavault》、《樹木茂る山麓/Wooded Foothills(ONS)》
である。
棚橋は、見えている《復活の声/Voice of Resurgence》から入り、インスタント呪文が多い林デックに対しプレッシャーとするが、林はお構いなしに《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang(FRF)》を召喚する。
《巣の侵略者/Nest Invader》、《極楽鳥/Birds of Paradise》と展開するが、場にセットされている秘匿土地は《苔汁の橋/Mosswort Bridge》のみであり、パワー8へは圧倒的に足りない。
林は、《復活の声/Voice of Resurgence》を《稲妻/Lightning Bolt(M10)》で除去し、手札のインスタントスペルの使用制限を解く。
4ターン目、棚橋の《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》に待ってましたとばかりに《マナ漏出/Mana Leak》を合わせる、ここまでは予定調和だった。
フルタップのはずの棚橋は、1枚の呪文を提示する。
《召喚の罠/Summoning Trap》
クリーチャーが打ち消された場合、0マナでキャスト可能なこのスペル。
林に残されたマナはなく、1枚1枚めくられるライブラリーを祈りながら見続けるしかない。
最後の6枚目から現れたのは、《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn(ROE)》。
対処不能な伝説クリーチャーが場に出ると、林は、ドローも見ずに、サイドボードへと手を伸ばす。
棚橋 1-0 林
林と初めて会話したのは、Finals05の2日目、Round1(エクステンデッド)が終了した時だった。
初日を全勝で折り返した彼は、初戦を落とし、そのまま惨敗した。
そのプレイは、スタンダードの時とは打って変わり、たどたどしく、反対側から見ても初見であることは容易に知れた。
プレイヤーの意志とデックの動きがバラバラとなり、目指すべき勝利からは遠ざかる一方であった。
それから数年が経ち、林は、“The Last Sun2014”のチャンピオンとなり、PPTQも突破し、勝ち続けている。
特に“The Last Sun2014”は、林が苦手としたスタンダードとモダンの複合フォーマットであった。
『White House』というチームで活動するようになり、スタンダード一辺倒だった林から、フォーマット分け隔てなく練習し、苦手を克服し勝ちにこだわるように変わった。
“練習は特にしていないが、なんとなく勝てる”
そんな根拠のない自信は今の林にはなく、積み上げた練習が林を支えている。
林は、着実に一歩ずつ、プロツアーという目標へ向けて歩を進めている。
だから、その手に握る《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》をプレイする彼は、美しい。
今、林とデックは、調和している。
Game2
林は、デックの代名詞《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》でスタートを切り、棚橋も《貴族の教主/Noble Hierarch》を出す。
ここまで均衡であったゲームバランスが崩れたのは、突然であった。
林の2体の《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》が、3ターン目に変身したのだ。 クロックは、突如尋常ならざる6点へと跳ね上がる。
棚橋は、クリーチャーばかり引いてしまい、2度の攻撃でライフは4。
除去も、ブリーチもなく、勝負は3ゲーム目へ。
棚橋 1-1 林
Game3
PPTQ決勝戦も3本目までもつれ込んだ。
後手1ターン目に召喚された林の《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》はすぐに《思考掃き/Thought Scour》を捲り、3点クロックを刻みだす。
だが棚橋も負けてはいない。
デックのダイナモといえる《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》をキャストすると、《樹上の村/Treetop Village》と合わせて5点のクロックを生み出す。
一撃で相手を倒すコンボが揃わなくても、小粒のクリーチャーとマンランドでダメージレースを仕掛けることも可能なのだ。
林は、クリーチャーによるダメージを受け、棚橋が追加のクリーチャーはなく、ターンを返すジェスチャーをすると、迷わず《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》を除去した。
3ターン目、林は1枚のカードをエンチャントする。モダン環境が始まって以来値段が高騰し続けている1枚のエンチャント、《血染めの月/Blood Moon》を置いた。
棚橋の場には特殊地形しかなく、ターンを返すことしかできない。
林も追加の呪文はキャストできないが、除去されないことを祈り、3点ずつクロックを刻み続ける。
棚橋の場に、《森/Forest》が出る。何の変哲もない基本地形だが、何よりも欲していたものだ。
しかしそこから繋がるマナクリーチャーがいない。
気がつけば8。
もう1ターン過ぎ5。
《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》が棚橋のライフを2とすると、林は《稲妻/Lightning Bolt(M10)》を公開し、勝利をその手に引き寄せた。
棚橋 1-2 林
林 隆智、優勝おめでとう!!
棚橋 雅康が、このテーブルに座った時、前回のPPTQを思い出さざるを得なかった。アブザンミラーを制した棚橋が、今度はモダンでも勝利する。
群馬は、棚橋牧場と化してしまうのか、そんな冗談めいたことを思ってしまった。
今大会を見た時、棚橋という存在は、デックも含めて抜きに出ている。
棚橋のデックは、赤緑のブリーチトラップに秘匿ランドを追加した、ナヤカラーのブリーチトラップ。
初見では、どんな動きは分かりにくい。仮に動きを理解していたとしても、《裂け目の突破/Through the Breach》と《召喚の罠/Summoning Trap》、小粒なクリーチャー達と《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》に導かれる秘匿土地が織り成すシナジーを適正に対処するのは困難だ。
ミラーマッチとなった準決勝、棚橋は緑マナのみの盤面へ《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》を投下し、赤マナを生成すると先手後手を入れ替え《裂け目の突破/Through the Breach》から《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn(ROE)》を決め、逆転勝ちしている。
勢いは十分、このままPPTQ突破となるか。
Game1
林の《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》でゲームの幕があける。
棚橋の手札は、
《巣の侵略者/Nest Invader》、《復活の声/Voice of Resurgence》、《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》、《裂け目の突破/Through the Breach》、《変わり谷/Mutavault》、《樹木茂る山麓/Wooded Foothills(ONS)》
である。
棚橋は、見えている《復活の声/Voice of Resurgence》から入り、インスタント呪文が多い林デックに対しプレッシャーとするが、林はお構いなしに《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang(FRF)》を召喚する。
《巣の侵略者/Nest Invader》、《極楽鳥/Birds of Paradise》と展開するが、場にセットされている秘匿土地は《苔汁の橋/Mosswort Bridge》のみであり、パワー8へは圧倒的に足りない。
林は、《復活の声/Voice of Resurgence》を《稲妻/Lightning Bolt(M10)》で除去し、手札のインスタントスペルの使用制限を解く。
4ターン目、棚橋の《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》に待ってましたとばかりに《マナ漏出/Mana Leak》を合わせる、ここまでは予定調和だった。
フルタップのはずの棚橋は、1枚の呪文を提示する。
《召喚の罠/Summoning Trap》
クリーチャーが打ち消された場合、0マナでキャスト可能なこのスペル。
林に残されたマナはなく、1枚1枚めくられるライブラリーを祈りながら見続けるしかない。
最後の6枚目から現れたのは、《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn(ROE)》。
対処不能な伝説クリーチャーが場に出ると、林は、ドローも見ずに、サイドボードへと手を伸ばす。
棚橋 1-0 林
林と初めて会話したのは、Finals05の2日目、Round1(エクステンデッド)が終了した時だった。
初日を全勝で折り返した彼は、初戦を落とし、そのまま惨敗した。
そのプレイは、スタンダードの時とは打って変わり、たどたどしく、反対側から見ても初見であることは容易に知れた。
プレイヤーの意志とデックの動きがバラバラとなり、目指すべき勝利からは遠ざかる一方であった。
それから数年が経ち、林は、“The Last Sun2014”のチャンピオンとなり、PPTQも突破し、勝ち続けている。
特に“The Last Sun2014”は、林が苦手としたスタンダードとモダンの複合フォーマットであった。
『White House』というチームで活動するようになり、スタンダード一辺倒だった林から、フォーマット分け隔てなく練習し、苦手を克服し勝ちにこだわるように変わった。
“練習は特にしていないが、なんとなく勝てる”
そんな根拠のない自信は今の林にはなく、積み上げた練習が林を支えている。
林は、着実に一歩ずつ、プロツアーという目標へ向けて歩を進めている。
だから、その手に握る《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》をプレイする彼は、美しい。
今、林とデックは、調和している。
Game2
林は、デックの代名詞《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》でスタートを切り、棚橋も《貴族の教主/Noble Hierarch》を出す。
ここまで均衡であったゲームバランスが崩れたのは、突然であった。
林の2体の《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》が、3ターン目に変身したのだ。 クロックは、突如尋常ならざる6点へと跳ね上がる。
棚橋は、クリーチャーばかり引いてしまい、2度の攻撃でライフは4。
除去も、ブリーチもなく、勝負は3ゲーム目へ。
棚橋 1-1 林
Game3
PPTQ決勝戦も3本目までもつれ込んだ。
後手1ターン目に召喚された林の《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》はすぐに《思考掃き/Thought Scour》を捲り、3点クロックを刻みだす。
だが棚橋も負けてはいない。
デックのダイナモといえる《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》をキャストすると、《樹上の村/Treetop Village》と合わせて5点のクロックを生み出す。
一撃で相手を倒すコンボが揃わなくても、小粒のクリーチャーとマンランドでダメージレースを仕掛けることも可能なのだ。
林は、クリーチャーによるダメージを受け、棚橋が追加のクリーチャーはなく、ターンを返すジェスチャーをすると、迷わず《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》を除去した。
3ターン目、林は1枚のカードをエンチャントする。モダン環境が始まって以来値段が高騰し続けている1枚のエンチャント、《血染めの月/Blood Moon》を置いた。
棚橋の場には特殊地形しかなく、ターンを返すことしかできない。
林も追加の呪文はキャストできないが、除去されないことを祈り、3点ずつクロックを刻み続ける。
棚橋の場に、《森/Forest》が出る。何の変哲もない基本地形だが、何よりも欲していたものだ。
しかしそこから繋がるマナクリーチャーがいない。
気がつけば8。
もう1ターン過ぎ5。
《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》が棚橋のライフを2とすると、林は《稲妻/Lightning Bolt(M10)》を公開し、勝利をその手に引き寄せた。
棚橋 1-2 林
林 隆智、優勝おめでとう!!
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