「競技レベルの大会で、トップ8に残れたの、初めてなんですよね。」

 心底嬉しそうに、そして優勝の二文字を力強く見据え、椎野は語ってくれた。

 スイスラウンド1位のまま決勝戦へ進んだその横顔には、自信と決意に満ち溢れていた。


 窮地は、いきなりやってきた。土地が2枚で止まってしまったのだ。順調にいけば、2体のクリーチャーによるクロックが形成されたであろう3ターン目に。

 この1ターンの差は大きく、クリーチャーと除去の交換が行われると、頼みの《嵐の息吹のドラゴン/Stormbreath Dragon(THS)》もカウンターされてしまう。

 フラッド気味でも諦めず、懸命にプレイを続けるが、《時を越えた探索/Dig Through Time(KTK)》の連打から《精霊龍、ウギン/Ugin, the Spirit Dragon(FRF)》へ繋がると、逆転の見込みはないと悟り、サイドボードへと手を伸ばした。



 追い詰められた様子もなく、淡々とサイドカードを入れ替えると、

 「先で」

この一言で、デックも目を覚ます。



 《道の探求者/Seeker of the Way(KTK)》、《ゴブリンの熟練扇動者/Goblin Rabblemaster(M15)》とクロックを用意すると、マナがない隙に《灰雲のフェニックス/Ashcloud Phoenix(KTK)》まで召喚し、相手に対処を迫り続ける。
 タップインランド1枚の差が、パーマネントとダメージソーズの差へと転じ、スクリュー気味の林を追い詰める。

 除去はあるか?カウンターは?

 いや、例えあるにしろマナがない。マナがなければ動けない。

 椎野の正確無比なプレイが、林へ本日初黒星をつけた瞬間であった。



 これまで単発除去に苦しめられてきた椎野であるが、今回は《ゴブリンの熟練扇動者/Goblin Rabblemaster(M15)》が残り、有利に進めていた矢先、《悲哀まみれ/Drown in Sorrow(BNG)》から大量の墓地をリムーヴしての《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang(FRF)》をキャストされてしまう。そう、4ターン目に。

 《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang(FRF)》こそ《払拭の光/Banishing Light(JOU)》をするも、複数行動取られてしまい、後手番に回ってしまう。
 《軍族童の突発/Hordeling Outburst(KTK)》がダメージを刻みだすも、後続は綺麗に対処されてしまう。

 コツコツとダメージを積み重ね、一桁へ足を踏み入れようとしたところで、待望の《嵐の息吹のドラゴン/Stormbreath Dragon(THS)》が姿を現した。

 ここまで使用された除去、カウンター、相手の動きから想像される手札と、トップデックしようとしているカードを考慮しつつも、一拍置き、自身を龍へと昇華させる。

 林が、場に出ることを認めると、1回、2回と力強く攻撃を繰り返す。

 林の最後のドローを見つめ、


 「負けました」


 という林の一言で、椎名の勝利が決まった。


 椎野 雅生、優勝おめでとう!!

コメント

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索